剪定・伐採に使う定番の道具とは(剪定鋏・刈込鋏・ノコギリ)
剪定や伐採といった造園作業の基本となるのが、植物の形を整えたり不要な枝を取り除いたりする工程です。これらの作業には目的ごとに適した道具が必要となり、その選び方や使い方を誤ると樹木を傷めたり、効率が大きく落ちたりします。造園の現場では、剪定鋏・刈込鋏・ノコギリが定番の三大ツールとされており、いずれも剪定対象や作業者の体格、剪定箇所の高さや枝の太さによって適切に使い分けることが重要です。
剪定鋏は、手のひらに収まるサイズで、細かな枝の切除や葉の整理に用いられます。刃の形状は「片刃」と「両刃」に分かれ、一般的には片刃タイプが切れ味に優れ、傷口もきれいに仕上がることからプロの間で多く使用されています。柄の素材には軽量なアルミ製、握りやすさを追求した樹脂グリップなどがあり、作業時間が長くなる現場では手の疲労を軽減する設計が重視されます。また、刃の材質には高炭素鋼やステンレス鋼が使われており、錆に強く切れ味が長持ちするものほど価格も高くなります。
一方で刈込鋏は、庭木や生垣などの広範囲を均一に刈り込むための道具です。両手で持つ長い柄が特徴で、遠くの枝にも手が届きやすく、広範囲を一度にカットできるため作業効率が大きく向上します。刃渡りが長いほど一回のカットで処理できる範囲が広がりますが、その分重量が増すため、作業者の体力や扱いやすさとのバランスが必要です。刈込鋏の選定時には、刃の硬度だけでなく、刃と刃の当たり(切断時の密着具合)やバネの復元性なども考慮され、長く使い続けるには定期的な手入れが欠かせません。
ノコギリは、太めの枝や幹の切断に使用される工具で、剪定鋏や刈込鋏では処理できない太さの枝に対応します。刃には直刃・湾曲刃・折込式などのバリエーションがあり、湾曲刃は少ない力で効率的に切断できるため、高所や不安定な体勢での作業にも適しています。また、折込式ノコギリは携帯性に優れ、安全に持ち運ぶことができるため、腰袋に常備する庭師も多く見られます。樹種や乾湿状態によって適した刃の形状やピッチ(刃の間隔)が異なるため、剪定対象に応じて使い分けることがプロには求められます。
それぞれの道具の比較ポイントを以下にまとめます。
| 道具名 |
用途 |
特徴 |
刃の種類 |
選定ポイント |
| 剪定鋏 |
細枝の剪定・整枝 |
軽量・片手使用・精密カットが可能 |
片刃・両刃 |
刃の材質、持ち手のグリップ性 |
| 刈込鋏 |
広範囲の刈込み作業 |
両手使用・長柄で遠くまで届く |
両刃 |
刃渡りの長さ、重量、刃の復元性 |
| ノコギリ |
太枝・幹の切断 |
力要らずで切断可能・種類が豊富 |
直刃・湾曲・折込 |
枝の太さ・位置・携帯性 |
道具の選び方を誤ると、剪定後の木の回復が遅れたり、切断面から病気が侵入するリスクもあります。そのため、用途に応じた最適な道具選びと定期的な手入れが極めて重要です。正しく手入れされた切れ味のよい鋏やノコギリを使えば、作業効率が上がるだけでなく、仕上がりも美しく、植物へのダメージを最小限に抑えることが可能です。次に、植栽や整地に欠かせない土づくり系の工具について紹介します。
土づくり・整地に必要な基本工具一覧(スコップ・鍬・移植ゴテ)
造園における基礎工事や植栽の準備には、土壌の掘削・整地・耕うん作業が欠かせません。植物の生育に適した環境を整えるうえで、土の硬さをほぐし、排水性や通気性を確保することが重要です。こうした作業で必須となるのがスコップ・鍬・移植ゴテといった基本工具です。見た目はシンプルですが、それぞれに用途や設計上の違いがあり、目的や土壌の状態に応じた使い分けが作業の効率と仕上がりを大きく左右します。
スコップは土を掘り起こす、運ぶ、整えるなど、多目的に使用される道具です。先端が丸みを帯びた「丸スコ」は柔らかい土や肥料の混合、植え穴の掘削に適しており、先端が角ばった「角スコ」は整地や砂利の均し作業に便利です。持ち手の形状にも「T字型」や「D型」などのバリエーションがあり、作業者の力の入れやすさや長時間作業での疲労軽減に影響します。最近では軽量アルミ製やスチール製に加え、折りたたみ可能なコンパクトモデルも人気があります。
鍬は硬い地面を砕き、耕す作業に使われる道具で、古くから農作業とともに重宝されてきました。造園では特に「備中鍬」と呼ばれる刃が複数本に分かれたタイプが主流で、粘土質の硬い土や根が絡む地盤でも力強く掘り起こすことができます。また、鍬の柄の長さや重量バランスも重要で、体格や作業姿勢に応じた選定が必要です。刃の材質には焼き入れ処理された強靭な鋼が多く、定期的なメンテナンスによって長く使える道具となります。
移植ゴテは植え替えや鉢の土の入れ替え、細かなスペースでの掘削作業に最適な手工具です。小型ながら先端が鋭く、狭い場所でも土を削ったり根を切ったりするのに便利です。スチール製のものは丈夫で長持ちしますが、最近では錆びにくく軽量なステンレス製や、柄が樹脂加工されたものも増えています。中には土の深さを測れる目盛り付きのモデルや、先端がスコップ状ではなくフォーク型になった園芸フォークもあり、作業内容によって使い分けることで効率が向上します。
以下に、これら基本工具の機能や特徴を比較した表を示します。
| 道具名 |
主な用途 |
特徴 |
材質 |
特に適した作業範囲 |
| スコップ |
掘る・運ぶ・整地 |
種類豊富・耐久性あり・丸型と角型あり |
アルミ・鉄 |
土の移動、植え穴づくり |
| 鍬 |
硬い土の耕起・砕土 |
備中鍬が主流・粘土や根のある土でも対応可能 |
鋼・木柄 |
土壌改良、整地、耕うん |
| 移植ゴテ |
鉢植えの掘削・細かい移植作業 |
小型・軽量・目盛り付きあり・手作業に最適 |
ステンレス・樹脂 |
植栽まわりの微細作業 |
これらの基本工具を正しく使い分けることで、造園作業の初期工程における精度とスピードが大きく向上します。また、各工具は土壌状態や植栽内容によって相性が異なるため、単に「掘れる道具」としてではなく、地形や作業条件に合わせて最適なものを準備することが、長期的な施工品質にも直結します。庭づくりの根幹となる土づくりの工程だからこそ、道具選びには十分な理解と計画性が求められます。