クレーンが使われる代表的な造園シーン(高木植栽・庭石設置など)
高木や景石などの重量物を扱う造園工事では、クレーンの活用が必要不可欠です。とくに幹周りが30cmを超えるような高木や、重量が200kg以上ある景石や灯籠は、人力での設置が現実的ではありません。植木の根鉢や石材の重量は見た目以上に重く、搬入・据え付け作業には安全性と精度が求められます。
たとえば、5mクラスの常緑樹を庭に植えるには、直径70cm以上の根鉢を含む重量を慎重に吊り上げて、傾きや傷をつけずに設置しなければなりません。これにはユニック車やラフタークレーンの活用が最適です。石材では、1枚100kgを超える天然平板を数枚敷設するだけでも、クレーンがあることで工期を短縮し、安全な作業が可能になります。
また、灯籠や蹲踞(つくばい)のような景観要素は、石質によっては衝撃に弱く、傾けたり擦れたりすると割れの原因となります。これらのパーツは細部の美観が重要となるため、正確な据え付けができるクレーン作業が求められます。
施工の現場では、単なる吊り上げ作業だけでなく、資材の保護・正確な設置・作業導線の確保まで含めて総合的に考えられたクレーン作業が求められます。とくに近年は「庭の質感」にこだわる施主も多く、設置後の見た目や管理のしやすさまでを含めて、重機作業の段階で計算に入れておくことが成功する造園工事のカギとなります。
狭小地・都市部でのクレーン利用の重要性
都市部や住宅密集地では、敷地の形状や道路幅などの制限により、重機の導入が難しい現場も少なくありません。とくに「旗竿地」「L字型敷地」「前面道路が2m未満」といった条件がある場合、クレーンによる上空からの搬入が唯一の選択肢となるケースも多く見られます。
都市部では、人通りの多い場所や建物の密集地での作業となるため、道路使用許可の取得や交通誘導員の配置、作業時間の制限など、多くの配慮が求められます。さらに、電線の位置や隣家との距離を事前に調査しなければ、クレーンを使用できないケースもあります。こうした場所では、熟練したオペレーターと事前の計画力が施工の成否を大きく左右します。
具体的な事前確認ポイント
チェック項目
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内容・注意点
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道路幅
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3m未満では特殊車両申請が必要
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電線の有無
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高所作業中に接触しないよう、現地写真で確認
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搬入口の幅
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根鉢や機材が通過可能かどうか
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地盤の状態
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アスファルト・土壌などで設置可能な重機が異なる
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作業時間の制限
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地域によっては9時〜17時の間のみ作業許可
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また、都市部では騒音や振動に対する住民の関心も高いため、近隣説明の徹底や作業日程の共有など、ソフト面での対応も必須となります。作業内容を明文化した案内文を事前に配布し、当日は誘導員が住民に丁寧な説明を行うこともトラブル防止に有効です。
さらに、地方と比較して施工単価も高くなりやすいため、現地調査を丁寧に行い、コストと安全性の両立を図ることが信頼を得る第一歩になります。
人力では不可能な造園作業に対応する機械の種類と特徴(ユニック車・ラフターなど)
造園工事で使用されるクレーンには、目的や現場条件に応じた多様な種類があります。代表的なものは「ユニック車」「ラフタークレーン」「高所作業車」の3種で、それぞれに特徴と適用範囲があります。
各重機の特徴と適用範囲
機種名
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特徴
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適した作業・現場
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ユニック車
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小型トラック搭載クレーン
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一般住宅・中小規模の搬入作業に適す
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ラフタークレーン
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高出力・自走式・安定性が高い
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高木植栽・公共工事・広範囲作業など
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高所作業車
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バケット式で人が搭乗可能
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剪定・ライト設置・装飾施工など
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たとえばユニック車は、一般的な3tトラックに装備され、狭い住宅街でも作業が可能な小回りの利く重機です。主に庭木や石材の搬入に使われ、コストも比較的安価です。一方で、吊り上げ可能な重量に制限があり、2t〜3t以上の作業には不向きです。
ラフタークレーンは、タイヤ付きで移動が可能な大型クレーンで、最大吊上能力が10tを超える機種もあり、大木の植栽や大規模造園に適しています。ただし、設置スペースの確保や道路使用許可が必要となるため、都市部では制約も多くなります。
また高所作業車は剪定やライティングの設置など、地上からの作業が難しい場面で活用されます。可動式のバケットに作業者が搭乗し、細かな施工が可能です。