現地調査とヒアリングで確認すべきポイント
造園設計を成功させるためには、最初の現地調査とヒアリングが非常に重要です。この段階で情報を正確に収集できるかどうかが、後の設計精度や施工品質に大きく影響します。まず土地の状態を正しく把握することが基本となります。
現地調査では以下の点を詳細に確認します。
土地の状態の確認項目
項目
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内容
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地形・高低差
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土地の傾斜、段差、平坦さを測定する
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土壌状態
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砂質、粘土質、水はけの良否を調査する
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日照条件
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日中の太陽光の当たり方、日陰の範囲を確認する
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風通し
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風の抜け方、強風や無風地帯の有無を調べる
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周辺環境
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隣接地の建物、道路、植栽、騒音、視線などを確認する
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加えて、ヒアリングでは施主のライフスタイルやニーズを深く理解することが求められます。単なる「庭が欲しい」という要望ではなく、具体的な使用目的や将来のビジョンまで踏み込むことが理想です。
・施主へのヒアリング項目例
- 家族構成(子ども、高齢者、ペットの有無)
- 趣味・嗜好(ガーデニング、バーベキュー、読書スペース)
- メンテナンスの希望レベル(ローメンテナンスか手入れ重視か)
- 利用頻度や季節ごとの使い方
- 将来的なリフォームや増改築の計画有無
こうした細かな情報をもとに、設計の方向性が決まります。また、土地によっては「土壌改良が必要か」「擁壁工事が必要か」といった追加工事の有無もここで判断します。これにより、後から予想外のコスト増加を防ぎ、透明性の高いプラン提案が可能になります。
現地調査とヒアリングは同時進行で行うのが一般的です。施主の希望を把握しながら、現実の土地条件とすり合わせることで、実現可能性の高い設計プランを作成できます。
土地の状態や周辺環境を無視した設計は、後々トラブルの原因になります。例えば水はけの悪い土地に芝生を敷いてしまうと、数年で腐敗してしまうリスクがあります。このようなリスクを未然に防ぐためにも、現地調査の段階で専門的な知識と技術を駆使することが求められます。
設計図の作成方法とCADソフトの活用
造園設計では、施主に正確な完成イメージを伝え、施工業者との認識のズレを防ぐためにも設計図の作成は必須です。現在では、手書き図面に加え、CADソフトを活用した設計が主流となっています。
まず手書き図面の役割について整理します。手書きによるラフスケッチは、初期のアイデア出しや、施主とのコミュニケーションに非常に有効です。自由な表現が可能で、イメージの共有がスムーズに進みます。
一方で、施工段階に入ると精緻な寸法や仕様が必要になります。このとき、CADソフトによる図面作成が不可欠となります。CAD設計のメリットには次のようなものがあります。
・CADソフト活用のメリット
項目
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内容
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正確な寸法管理
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mm単位で精密な設計が可能
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修正・変更が容易
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レイヤー管理により部分的な修正が簡単
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三次元表現
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3Dパースやバーチャルウォークスルーが作成可能
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データ共有が簡単
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施主、施工業者間でデータを容易に共有可能
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シミュレーション機能
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日照、風向き、植栽成長シミュレーションが可能
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代表的な造園設計用CADソフトには、RIKCAD、Vectorworks Landmark、AutoCAD Landscapeなどがあります。特にRIKCADは日本国内の造園・エクステリア設計業界で広く使われており、豊富な植栽データベースと高精度な3Dパース作成機能が特徴です。
設計図には以下の要素を盛り込みます。
- 配置図(建物、庭、アプローチ、駐車場の配置)
- 植栽計画図(樹種・本数・配置)
- 照明計画図(庭園灯、間接照明)
- 給排水計画図(散水設備、排水路)
- 構造物詳細図(デッキ、パーゴラ、フェンス)
これらを正確に盛り込むことで、施工中のトラブルを防ぎ、完成後のイメージのズレを極限まで減らすことが可能になります。
造園設計においては、CAD設計スキルが設計士の実力を左右するといっても過言ではありません。手書きとデジタルの双方のスキルをバランスよく活用することが、ハイレベルな造園設計には不可欠です。
施工から完成後のアフターサポートまで
造園設計のプランが確定した後は、いよいよ施工フェーズに入ります。施工工程では、設計図面に基づいて土工事、植栽工事、構造物工事などを順次進めていきます。
・造園工事の主な工程
工程
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内容
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土工事
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土壌改良、地盤整備、排水工事など
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構造物施工
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デッキ、アプローチ、フェンス、パーゴラの設置
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植栽工事
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樹木、草花の植え付け、芝張り
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照明工事
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庭園灯、スポットライト、間接照明の設置
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仕上げ工事
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砂利敷き、ウッドチップ敷き、掃除・整地
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施工中に注意すべきポイントは、設計図面との整合性の確認です。現場の状況により、多少の変更が生じる場合もありますが、施主に逐一説明し合意を得た上で進めることが信頼関係構築の鍵となります。