和風庭園・テラス・商業施設でのパース事例集
造園パースの真価は、完成イメージを視覚的に伝えるだけではなく、設計者の意図を施主や関係者と共有し、スムーズな合意形成を実現できる点にあります。特に和風庭園やテラス空間、商業施設といった用途では、図面だけでは伝わりにくい空間の雰囲気や動線、植栽の配置バランスなどを的確に伝えるために、パースは欠かせない要素となっています。
和風庭園では、限られたスペースの中に「奥行き」「余白」「季節感」を取り込む設計が求められます。たとえば、以下は実際の設計パースと完成写真の比較です。
空間種別
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パース上の設計意図
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完成写真での反映内容
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和風坪庭
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縁側から見える角度でアシンメトリー配置
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自然石と苔がバランスよく配置され視線誘導が成立
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テラス+石張り
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モダン素材を直線配置で重厚感を演出
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グレーの御影石と間接照明が映える空間に
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商業施設中庭
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スロープを中心に木道と水景を対称に配置
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動線の安全性とインスタ映えの視覚要素が両立
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上記のように、パースを使うことで、設計段階で空間全体の流れと植栽・照明・素材の調和を視覚化し、発注者にとっては安心材料となります。
また、商業施設においては「集客効果」や「ブランディング」に貢献する空間演出が求められます。たとえば、夜間照明の反映や、SNS投稿を狙った映えるスポットの設計は、パースの段階でその効果を確実に伝える必要があります。平面図や断面図では把握できないこうした空間的・情緒的価値を、パースは短時間で的確に示すことができます。
一方で、初期段階ではまだ設計の方向性が定まっていないケースもあります。その際は「手描き風」のパースで柔らかくイメージを共有し、方向性が固まってから「写実的なパース」で詳細詰めをするという二段階パース活用法が有効です。
設計者にとっても、パースは単なるプレゼン資料ではなく「空間の思考を深めるツール」として機能します。実際に、完成写真と照らし合わせることで「この植栽の位置が視覚的に効果的だった」「照明の配置をパース時にもう少し検討すればよかった」といった反省も生まれ、次の案件に生かすことができます。
このように、和風庭園やテラス、商業施設など多様な用途において、パースは単なる完成予想図ではなく、空間デザインの中核を担う存在になっているのです。
ファミリー住宅向け 家族構成に応じた庭のデザイン提案事例
造園パースが特に威力を発揮するのが、ファミリー層向けの住宅庭園デザインにおいてです。子どもやペットとの共生、夫婦のライフスタイル、親世代との同居といった背景によって、求められる庭のあり方は大きく異なります。その多様性を「視覚的にわかりやすく」「リアルに」伝える手段として、パースは非常に有効です。
たとえば、以下のような家族構成ごとの庭づくりにおける提案事例があります。
家族構成
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主な要望
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パースでの表現意図
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幼児のいる家庭
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安全な遊び場、転倒防止、目が届くレイアウト
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芝生+デッキ+目隠しフェンスの一体化設計
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小学生+ペット
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動線の確保、足洗い場、草むしりの軽減
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防草シートの設置、散水設備の配置
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高齢者同居家庭
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段差解消、手すり設置、管理のしやすさ
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スロープ付きアプローチ、低木中心の植栽設計
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中高生のいる家庭
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プライベート感、夜の演出、親子で使える空間
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パーゴラ+照明+可動家具の提案
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パースを用いることで、実際の家の建物とのバランスや隣地との視線の関係、日当たり、植栽の季節感などがより具体的にイメージできるようになります。特に「完成形を見たい」というニーズが強いファミリー層にとって、視覚的なわかりやすさは意思決定の速度にも直結します。
また、家族構成の変化に柔軟に対応できる設計提案も重要です。たとえば、幼児の時期には芝生スペースとして使い、小学生になると家庭菜園コーナーに転用する、あるいはウッドデッキの一部に可動式の日除けを設けて、夏はプール遊び、冬は日向ぼっこができる空間にするなど、将来を見据えた設計提案が歓迎されます。こうした変化も、パースによって「今」と「将来」を並べて比較することで、家族にとってより実感が湧くものになります。
ファミリー向けのパース制作では、色彩や素材のリアル感が非常に重要になります。例えば、天然芝と人工芝の質感の違いや、木目調フェンスの影の出方、照明が当たった際の床面の色味の変化などを細かく再現できるRIKCADやオーセブンCADは特に評価が高いです。こうしたツールの利用により、施主の「これが本当に出来るんですね」という信頼を勝ち取ることができます。
さらに、ファミリー向け提案では、クライアントとのコミュニケーションが非常に重要です。CADソフトに搭載されている3Dウォークスルー機能を用いれば、完成後の庭を実際に歩いているような体験を提供でき、「ここはもう少し広く」「ここに照明を追加したい」といった要望をその場で共有し、反映することができます。これにより、打ち合わせの回数が減り、納期短縮やコスト削減にもつながります。
このように、ファミリー住宅における造園パースは、視覚化による合意形成のためだけでなく、家族の未来の暮らしまで想像させる重要なツールとなっているのです。